本好きの妙な日常話の数々です
暁懐中日記
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続・一輪椿
2007-07-10-Tue  CATEGORY: 小説。むしろネタ帖?
いつぞや書いた短編の続きを、唐突に書いてみたり。
前編の『一輪椿』は“小説めいた落書き。むしろネタ帳”参照です。




 こんこんという自らが咳こんだ所為で眼が覚めてしまった。とろんと向けた視線は発熱のため、ゆるくうるんでいる。
 昨日滅多に降らない雪にはしゃいで、おそくまで外にいたのが悪かったのだろうか。それともお風呂から出てから、すぐに濡れた髪を乾かさなかった事か。
 おやつを食べたすぐ後くらいから、背中がぞわぞわしだし、急に喉がいがらっぽくなってきたのだ。日が暮れる頃に体温計で図ったらすでに平熱をこえていた。
 おばあちゃんが苦笑して「今夜はお泊まりなさいな」と言い少女の家に電話をかけるのを微熱でぼぅとする頭で眺めていたのは覚えているが、それから先はあやふや。
 布団に入る前に、おばあちゃん特性の葛湯をもらった事だけはおぼえているのだが。


 布団に入りっぱなしで生ぬるいのが気持ちが悪く、緩慢な動作で首を巡らせれば、夜闇に沈む室内にぼんやりとした朱赤の光が見えた。

 何故だかそこだけぼんやりと蝋燭の焔で照らされたような。
 あったかい赤い色をした一輪の椿。

 瞼ににじんだ涙を追い出すように瞬きをするのに、ちっともはっきり映らない。
 ゆるゆると眠りにひたりそうになった時、咳の発作が喉にきた。こほこほと繰り返すと、目尻にたまった涙がついっとこぼれる。
 苦しい、と考えた時。 苦しいの、と聞かれた。
 うん咳がえらいの、と答えたら かわいそう、と呟かれた。
 かわいそうかわいそう。苦しいのはかわいそう。えらいのはかわいそう。だから、だから。

                  *

 雀の声が耳元で聞こえ、瞼の裏が明るく染まっている。
 ぱっちりと眼を開ける。障子硝子の隙間から水色の空が見えた。体を起こして布団の中で座り、枕元に落ちていたそれを拾い上げた。
「ああ、起きたかい。おはよう」
 熱はどう、と額に手を伸ばされて優しく前髪を書き上げられる。
「大丈夫だね。顔色もよくなったよ」
「うんもう苦しくないよ。…ねぇおばあちゃん、お庭の椿切っちゃったの?」
 少女の手のひらに在ったのは赤い椿の花。しっとりとした花びらは切花にしてしまうには、少しも痛んでなくて。勿体無いような、可哀相な気がしたのだ。
 そういうと、あばあちゃんはゆっくりと笑って答えた。
「病気になった人の枕元に、お花を飾るのは知ってるね」
「うん」
「あれにはねちゃんと理由があるんだよ。お花はね、とってもとっても優しいの。優しくて優しくて、苦しんでいる人がいると癒してあげたいと思うのよ。自分の命をあげてまでと、何の見返りも求めずに」
 心臓の奥を、きゅうとつかまれたような気がした。
 切ないような何とも言えない顔で、掌中の椿を見つめる孫娘の頭を乾いた皺の浮く手で撫でてやる。
「お花にちゃんとありがとうを言って、土に返してあげようね」
「それだけで、いいの?」
「それが大切なんだよ。お花からもらった元気に、ありがとうの気持ちを返してあげるの。そうすればお花からもらった愛情に答えたことになるんだよ。そしてこれからも愛情を込めて手入れをしてあげれば、お花はますます綺麗に咲いてくれるんだよ」

<一輪椿・終>




これを書こうと思ったのは某オーラの番組で美輪さんが花の無垢な愛情について語った言葉に、感動したからでした。
あの番組好きです。
超常現象を面白おかしく話すのではなく、それを元に相談に答え導きの言葉を述べる点が。近代から現代に入る頃に失われた、巫術的な職についていた人の言葉のようで。
ある程度神秘的なものはないと人間は文字どうり「神も恐れぬ」行為に走ってしまうと思うので。
 
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