本好きの妙な日常話の数々です
暁懐中日記
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赤い下弦の月
2006-08-20-Sun  CATEGORY: ムジンセイサク。

 これは明日の希望を信じるより、今の現実を生き抜くことに必死だった頃の物語。
 静かな夜だった。森は暗闇に輪郭を手放し、絶え間なく流れるせせらぎの音が夜行動物の気配すら無散させている。
 そんな静止画ような光景に不意に動きが生まれる。忽然と、まだ子どもらしさを残す幼い手が、地面から生えたように現われたのだ。もし見るものがあれば亡霊の蘇りかと思っただろう光景だが、人目どころか生きものの気配すら皆無。
 ゆっくりと、だが確実に手は土をどけ、やがて両の腕を、薄茶の髪を現わにした。気配を探るように動きを止めたのち、一気に地から身を起こす。
 穴にしか見えないそこから這い出してきたのは、まだ子どもらしさを残す面立ちに似合わない冷たい眼を少年だった。
 少年は空を見上げるなり顔をしかめた。天には下弦の半月が赤々と光を降りまいている。
「月は、嫌いだ」
「それは嫌味?」
 苦笑と若干の揶揄を含んだ声に振り替えれば、天に今は無き銀月を見た。
「お前の事じゃない、魄」
 起こしたかと尋ねる少年にかいぶりで答え、月光を名にもつ少女は少年の隣に並んだ。
「今日の月は一段と赤いわね」
「それが嫌なんだよ」
「あら、私は好きよ」
 その言葉にセイは再び眉を寄せた。赤い月は血を連想させる色合いをしている------今も記憶を手繰れば鮮明に蘇る、鮮血を。鮮血の上に臥したあの人の姿を。
「私の国ではね、特に赤い月を緋月と言ったわ」
「緋色の月か?」
 そう、と答えた少女は謡うように続けた。
「それが私の闇花以前の唯一つの記憶なの」
驚きをもって見つめた少女はひどく静かな表情で視線を天へとむけた。




予告どおり『赤い下弦の月』アップです。遅くなってしまいました(汗)
参加者は『青光屋』の風波さんと『煌彩灯』のにゃあさんです。

以下は上記作品の追記と言い訳になりますー


ぶっちゃけこの話、ある程度理解できる方は一人しかいなかったりします…。オフで先行公開してる人にしかわかんないんですよ!『魄』も『セイ』も『闇花』も!!

ネタバレになりますが魄・セイというのはそれぞれ月とゆえの以前の名前だったりします。そして闇花というのは年少時四人が所属していたある組織の名称。この話の時間軸ではその闇花を逃亡している真っ最中になり、セイが穴から出て来たのは隠れていたためなんです。
実を言うとシリアスにするつもりだったのにあのシーン書いた所為で笑いになるッとか思ったのは秘密です(言ってるし)

場面切り取りしたようなお話ですが、楽しんで頂けたでしょうか?
感想など聞かせていただけると嬉しいです♪
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